愛のニワトリ劇場・ファイナル

 

オスカーとアンジェリークが結ばれて1ヶ月。

季節は夏至となっていた。

2羽のたまごは果たして産まれたのだろうか。

すでにあの2羽へのイレコミが半端ではなくなった私は飼い主に直談判に向かった。

元々ニワトリがなぜか好きな飼い主で自家用の孵卵器まで持っているそうだし

ここは一つ私の野望を叶えてはくれないだろうか。

何だったらうちで1羽引き取ってもいい!…と言うくらいイレ込んでいたのだ。

「あ〜、なんや、茂左右衛門(うちの屋号)とこの下の息子の嫁やないか。」

と、いきなりローカルな挨拶で始まったのだが…

 

「あのニワトリかあ、あれはたまご産まんで。」

「元々なかなかたまご産まん種類のニワトリや。

そやさけ、たまごの値段も1個500円もするんやで。

まして、チャボとじゃあなあ。」

 

 

「今年ももう夏至もすんだ。

その雄鶏のサカリも落ち着く頃やろ。

どっちゃにしろ、今年は無理や。」

 

私はいいようのない寂しい気持ちでオスカーを見つめていた。

「…そうだよな…、おまえもそろそろサカリが落ち着く頃か…」

「…ま…、食えや…。」

私たちの気持ちを知ってか知らずか、彼女はやってきた。

アンジェリークが今年オスカーのたまごを産むことはない。

夏至をすぎ、オスカーだって今年のサカリは過ぎている。

彼らの蜜月はとっくに過ぎているのだ。

「なぁに?」「どうしたの?」

いつもと変わらない彼女の甘えた様子に…。

それでも…それでも彼は3ヶ月ぶりのお菓子を投げ捨てたのだった。

 

 

たまごを産まなくっても

サカリはすぎても

やっぱり2羽はお菓子を分かち合い、寄り添っていた。

 

 

「…また…来年ね…」

 

 

おしまい

 

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