ラッピング! 第3話
アンジェリークが「しまった。」と思った時にはもう遅かった。
本当ならアンジェリークの細い腕でどんなにオスカーを突き飛ばそうと、あの大きな体が動こうはずどない。
それなのに今、彼を身じろぎさせているのは
おそらく初めてアンジェリークから発せられた拒絶の言葉だ。
「いや……すまなかった。君を傷つけるつもりはなかったんだが……。」
傷ついているのはオスカーの方だ。
アイスブルーの瞳が一瞬それる。
アンジェリークの心が疼く。
一番大切な人を傷つけた。
二人の間に気まずい空気が流れる。
「何か飲むものでも持ってくる。待っていてくれ。」
そんな空気を振り払うかのように、オスカーは気にしていない素振りで立ちあがる。
アンジェリークを不安がらせないように軽く笑ってみせるとドアに向かって背を向けた。
……だめ……! こんな気持ちのまま、一秒だってオスカーさまをおいちゃいけない。
彼は優しい人だから、わざと明るく振る舞って私のことを気遣ってくれる。
でも、オスカーさまは……。
「待って!」 アンジェリークは駆け寄ると、後ろからオスカーの広い背中に抱きついた。