ラッピング! 第2話

「本当はちゃんとそれなりの下着も届けられていたのよ。

でも、黒のレースでできていて、ついでにはくとほとんど紐みたいな下着で

つけているんだかいないんだかわからないものだったから、

つい手近なところにあったのをつけちゃったんだったわ。

まさかこんな事になるなんて思ってもいなかったし……。

どうしよう、こんな子供っぽい下着、きっとオスカーさま呆れられるわ。

もしかしたらあっちの方がオスカーさまお好きだったんじゃ……。でも、そんなのいやーっ。」

今更考えたってどうなるものでもないのだが、アンジェリークの頭の中はぐるぐる回り続けていた。

そう、今、自分が誰とどこにいるのかさえ忘れてしまうほど。

「アンジェリーク……?」

「ひゃああっ!」

いきなり背後から声を掛けられ、アンジェリークは飛び上がる。

びっくりしたのはオスカーの方だ。

せっかく夜の約束を取り付け、部屋にアンジェリークを招き入れたはいいが、

当の彼女はひどく落ち着かない。

心配して声をかけたとたんこの反応が返ってきた。

「オ……オ…オスカーさま……。」

「どうしたんだ。ずいぶん落ち着かないようだが……。」

心配そうにのぞき込んでくるアイスブルーの瞳が目の前に急に迫ってくる。

アンジェリークの思考はほとんど停止しそうである。

「な…なんでもありません。ちょっと緊張しちゃって……。」

「そういえば、二人きりでこうやって会うのは久しぶりだな。」

オスカーはすっとアンジェリークの肩を抱き寄せる。

そのタイミングがあまりに自然でアンジェリークはオスカーに吸い寄せられるように身を預ける。

「おいで。」

オスカーはアンジェリークを連れ窓のそばに立つ

厚いカーテンを開けると、いつの間にか雪はやんでいてあふれんばかりの星が輝いている。

その空の向こうから波のように揺らめいて極光が広がっていく。

「……綺麗……。」

思わず息をのむアンジェリークの横顔を満足気に見つめ、オスカーはその肩を抱く手に力を加えた。

「綺麗だな……。」

「ええ、私初めて見ました。これがこの星の……。」

はしゃいだ様子で振り返ったアンジェリークをオスカーの瞳が捕らえる。

「綺麗なのは君だ……。アンジェリーク。」

大きく目を見開いたままのアンジェリークにゆっくりと口づける。

包み込まれるような長い口づけにアンジェリークの意識がぼうっとなる。

「今日はずいぶんいつもと感じが違うんだな。」    

  どきん……!

「よく似合っている。眩しいくらいだ。」

アンジェリークの顔がまるで花がほころぶようにぱぁっと輝く。

女性に関しては万事そつのない彼の言葉ではあるが、彼の賛辞の言葉はまるで耳の奥に響くヴァイオリンのようだ。

アンジェリークの華奢な体を抱きしめる手はますます強く、アンジェリークは息が詰まりそうになる。

再び唇を覆われると、甘いしびれに全身の力が抜け、アンジェリークはオスカーの腕に支えられながらも崩れ落ちる。

そのまま押し倒されるように近くのソファーに横たえられたときには、もはやくったりとなっていた。

「俺は…俺のために君がこんなにも美しく装ってくれたんだと自惚れてもいいのか……?」

うれしさと恥ずかしさに顔を赤く染めながらも、アンジェリークはこくんとうなずく。

「いつまでも子供だと思っていたのに…いつの間にかこんなすばらしいレディになっていたんだな……。」

オスカーの手がアンジェリークの胸にわずかに触れ

…が、その刹那アンジェリークの脳裏に「アレ」が走る。

白地にピンクのチェック、その上にちりばめられた真っ赤ないちご…

…あれを見られたら……

「いやーっ!!」

アンジェリークの腕はオスカーの胸を突き放していた……。

 

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