紅の結鎖 9

夜が白みはじめる。早朝の女王宮。ロザリアとゼフェルは堅くとざされている門を開け中に飛び込む。
「アンジェリーク!オスカーッ!」
女王宮は静まりかえり、物音ひとつしない。
「寝室は……!?」
はっとなって奥の女王の私室の方へ駆け上がる。鍵はかかっておらず、ドアを開けると

…二人がいた…

寝台の上、はだけた胸元もそのままにオスカーがヘッドに上半身をあずけ横たわっている。息は荒く、汗がふきだしている。そのすぐ傍らにアンジェリークが夜着のまま、心配そうに寄り添う。
「アンジェリーク、オスカーから離れろ!」
アンジェリークは泣きそうな顔で答える。
「ごめんなさい、ゼフェル様。オスカーさま、苦しいらしいの。私の血を吸えば治るって言うのに、吸ってくれないの。オスカーさま、ほとんど動けないし、もう声もでない…私、オスカーさまについていたいの!」
「ばかやろう!そんなことしたらお前まで…。オスカー、よくここまでこれたぜ…って言うか、動けたもんだ。お前の屋敷にはもう医者を待たせてある。さもないと本当に死んじまうぞ。」

 

 

「はめられたんだよ。反女王体制のテロリストか何かしらねえが、オスカーを使ってアンジェリーク、お前を狙ったんだ。心配するな。オスカーは助かる!」

…オスカーは助かる……

その言葉だけがアンジェリークの頭の中で響く。緊張がとけ、アンジェリークはへなへなと力が抜ける。そのまま、オスカーの上に覆い被さるように倒れると、気を…いや、正確には眠ってしまった。

 


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