「こっちにするわ。」
「それは豆のかんづめでんな。
よろしいんでっか?たしか、炎の旦那はんは…」
そうなの、オスカー様は豆が嫌いなの。
でも、私の大好きなオスカー様が
こんな世間一般に知られるほど嫌いな食べ物があるなんて
なんだかイヤ。
私だってセロリは嫌いだけど、ちゃんと食べるもの。
でも、オスカー様は絶対に箸もつけないのよ。
私のこと子ども扱いするくせに、
オスカー様ったら変なところで子どもみたいなことをするんだもん。
これは試練よ。
オスカー様の弱点克服のためにはこの位の試練は必要だわ。
「ええ、いただくわ。ラッピングしてください。」
…と、そこへなにやら地響きが…

「豆、豆、豆が切れたーっ!!」
あ、地平線の彼方から突っ込んでくるのは
天下の豆将軍ヴィクトールさんじゃない。
「今年の節分にかきあつめた豆がとうとうなくなっちまった。
あと2ヶ月近く豆なしでは生きていけーん!」
…節分の時、あっちこっちの神社に出没して
「悪い子はおらんかあぁぁぁ」と鬼に扮して
豆まきの豆をかきあつめていたという噂は本当だったのね。
豆嫌いも困っちゃうけど、
オスカー様がこんな豆好きになられてももっと困っちゃうなあ…。
「すんまへん、豆のかんづめはたった今…」
「わ、私はいいわ。このかんづめはヴィクトールさんにお譲りしますから。」
「へ…陛下、なんと畏れおおくも慈愛に満ちたお言葉…、
ありがとうございますぅぅぅ〜〜〜。」
こ…こんな大きな人が迫ってくると、こ…こわい…
「い…いいのよ。
それよりこれからも王立宇宙軍とオスカー様のことをよろしくね。」
「はは〜っ」
オスカー様の好き嫌いを治すのはもういいわ。
別なプレゼントにしようっと。
天使の像を買う