「天使の告知」 第9話
「アンジェ、サンタへの手紙は書けたんだろ。」
「はい、でもまだお渡しできません。」
アンジェはにこにこして答えます。
早いところもらわないとこちらも準備があるんだけどな、と思いつつ
そうそう催促をして疑われては大変なので
オスカーはもう少し待つことにしました。
もっとも、このお人好しのチビ天使がオスカーを疑うとはあまり思えなかったのですが。
ところが…
☆
その夜、部屋の中でアンジェリークはぐったりと倒れていました。
小さな翼は力なく、まるでしおれた白い花のようです。
「アンジェ!!」
オスカーの声にアンジェリークはぼんやりと目を開けました。
「具合が悪いのか!?さっきまで元気だったのに、一体…。」
「…時間がきたんです。今日はお使いの最後の日ですもの。」
今日は12月21日
アンジェがオスカーに女王様からの手紙を届けるはずの日です。
「…私は陛下のお手紙を届けるために地上に来たから…
地上にいられるのは約束の日まで…。
お使いが終わらないと天使は聖地には帰れません…。
聖地に帰れないのが私たち天使への罰…
聖地にも帰れず地上にもいることができない天使は
光の粒になって消えてしまうんです…。」
アンジェリークが目を伏せると
そのまま少しずつ体が光り始めました。
小さな蛍のような光が一つ、また一つとアンジェリークの体から離れていきます。
「オスカーさま…陛下のお手紙、なくしちゃってごめんなさい…。
サンタさんへのお手紙…届けてもらおうと思ったけど
私やっぱりお使いもできないダメな子だから
サンタさん来てくれません…だから、もういいです…。
ありがとう…ごめんなさい…。」
今にも消え入りそうな声がオスカーの胸のあたりに響きました。
「ちがう!悪いのは俺だ!女王様の手紙は本当はここにあるんだ!!」