「天使の告知」 第8

 

「わーい、私の大好きなものばっかり〜。すごーい。」

アンジェリークは大好きなお菓子や

柔らかくっててざわりのいいぬいぐるみに囲まれて

もうぽ〜っとなっていました。

「でもいいんですか。大事なおこづかいでしょう。

こんなに買っちゃったら無駄遣いだって怒られちゃいますよ。」

「いいんだ。もうすぐクリスマスだから。

クリスマスにはプレゼントを用意しなくっちゃ。」

うれしそうなアンジェリークの様子を見ていると

オスカーの胸はちょっとだけ痛くなくなります。

「ありがとうございます、オスカーさま。とってもうれしいです。」

 

本当はアンジェリークにあげて一番喜ばれるものは

何なのか知っているのだけれど

それを渡すのは絶対に嫌でした。

それを渡したらアンジェリークとはもう会うことはできないのです。

「本当のことを知ったらきっとアンジェは俺のこと嫌いになっちゃうだろうな。」

オスカーの心にささった針がちょっぴり大きくなった気がしました

「そうだ、サンタクロースから何をもらうか決めたかい?」

「はい。でも、どうやってサンタさんにお伝えしたらいいんでしょう。」

真剣に悩んでいるアンジェリークを見て

オスカーはサンタクロースに一生懸命手紙を書いている友だちを思い出しました。

「手紙を書くといいぜ。手紙は俺がサンタに届けてやるから。」

「そうですね、お手紙を書く方法がありました。

オスカーさまってとっても賢くていらっしゃるんですね!

それにサンタさんともお知り合いなんですか。すごいです。」

にこぱ、と笑うアンジェリークを見て

オスカーはどんな顔をしていいのか分からなくなりました。

「あいつの家の人もこんな苦労をしてるんだろうな…。」

何で、自分は一度もサンタクロースからプレゼントをもらったことがないのに

このチビ天使のサンタ役をする事になっているのか、

しかも、こんなに手間をかけてプレゼントを用意しても

手柄はみんな見も知らない架空のじいさんのものになるのです。

ちょっと理不尽な気もしましたが

サンタに一生懸命手紙を書いているアンジェを見ていると

まあ、いいかと思うのでした。

たとえ、アンジェの「ありがとう」の言葉がサンタにむけられようとも

このお人好しのチビ天使が喜んでいることが

同じように自分の心をあたたかくしてくれる。

 

「真昼の星」は絶対に見えることはないけれど

確かに空で輝いている。

ひょっとしたら世界には目には見えないことの方が

ずっとずっと多いのかもしれない。

サンタクロースはいないのだと誰が言える?

サンタはいるんだ。いるといったらいるんだ。

アンジェにサンタなんていないという奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやる。

 

オスカーは今までの自分だったら「ばかばかしい。」と言っていたことを

真剣に考えているのでした。

 

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