「天使の告知」 第5

 

「それで、手紙っていうのはどんな大きさなんだい?」

「そうですねえ。」

オスカーはひらひらと飛ぶアンジェリークと一緒に

街中を歩いていました。

ちょうどクリスマスの10日前で街の中はとってもにぎやかです。

楽しそうな音楽に綺麗なイルミネーション。

飾られた金や銀、赤や緑のリボン。

多分すごく困ったことになってるはずなのに

アンジェリークは楽しそうな街中の様子に

半分心を奪われてしまっているようです。

アンジェリークはちょこんとクリスマスリースの上に座ると

「あのですね、ちょうどこんな感じの丸い白い珠なんです。

お日様にすかすとオスカーさまの姿が浮かびます。

でも、そのままではメッセージは読めません。

わたしがその珠をかざして陛下のお言葉を伝えるんです。」

 

「ところでオスカーさま、あの白いおひげのおじいさんは誰なんですか?」

アンジェリークが見ているのは

赤い服を着たサンタクロースのオーナメントでした。

「あれはサンタクロースだよ。

クリスマスの夜によい子の所にプレゼントを届けてくれる人さ。」

「えーっ!!そんな気前のよい方がいらっしゃるんですか!?

すごーい、すごーい!!

でも…私、今までもらったことありませんけど

それって私がよい子じゃないからでしょうか…。」

オスカーはちょっとかたまってしまいました。

オスカーだっていままでサンタからプレゼントなんてもらったことはありません。

現実主義のオスカーの家では

そのような非現実的な催しにはあまり熱心ではありませんでしたから。

それなのにこのチビ天使は

天使なのにサンタクロースを信じてしまっているのです。

そしてプレゼントをもらえない自分を悪い子だからかと悩んでいるようです。

「…きっと忘れてたんだよ。年寄りは忘れっぽいからな。

今度のクリスマスにはきっとアンジェの所にも

プレゼントは届くと思うぜ。」

「…ホントでしょうか…。」

ちょっと心が痛んだのですが

何より女の子の悲しい顔が苦手なオスカーは

「そうさ、だからそうしょげるなよ。」

「そうですね、きっと忘れていたんですよね。

今年ちゃんとお使いができたら

きっとサンタさんはプレゼントを下さいますよね。

わー、何をお願いしようかなあ。」

心底うれしそうなアンジェリークの様子に

嘘をついた後ろめたさはあっても

なんだかあたたかいものが胸の中にわいてくる気がしました。

それがなんなのかはよく分からなかったのですが

アンジェリークが前に言っていた

「真昼の星」のようなものに近い気がしました。

 

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