「サニーサイド」のあっちょんさんからいただいたお中元

「お帰りなさい」

 

「もう出たんですか?ゆっくりつからないと疲れ取れませんよ?」

テーブルの上にはサラダと小鉢が二つ、そしてカラトリーが並んでいた。
もう座ってスプーンを持つだけになり席に着く。
籠の中のパンはいつも買っている駅前の物だろう。

「どうぞ召し上がれ。お口に合うといいんですけど・・・」
「ああ、いただこう」

すぐに説教してやろうと思ったが、ここまでされると言いにくかった。
だがしかし、この材料だってどうやってそろえたのだろう。
一口、口にすると話を切り出した。

「アルフォンス・エルリック・・・どうやってこの家に入って来たのだ」
「え?鍵を開けて入りましたけど・・・」
「鍵はどうした」
「ああ、玄関すぐのボックスに入ってますよ」
「鍵をどうやって手に入れたのか聞いているのだ」

口調が強くならないよう気をつけて話したがどうやら機嫌を悪くしていると悟られたようで、アルフォンスは不安げな表情で小首をかしげた。
悪い事をしている自覚がないのだろうか・・・。

「もしかして、聞いてませんか?」
「何をだ」
「スカー先生のお兄さんからLINE連絡が来て、猫の世話を頼まれてくれないかって。だから鍵は先生のお兄さんから預かりました」
「!!!」
「あれ?お兄さんから先生に伝えておくって言ってたのに、忘れちゃったのかな…」

 

 

もちろん初耳だった。
それよりもアルフォンスと兄がつながっているとは全く知らなかった。
生徒にこんなプライベートな事を頼むのは、スカーにとって不本意だった。
ならば何でも屋とか、そういう業者に頼んだのにとひとりごちた。
『兄者め・・・どうしてやろう』
と不穏な雰囲気を察してかアルフォンスが話し出した。

「あの・・・、なんか急にお兄さんも仕事が忙しくて面倒が見られなくなっちゃって。で、仕方なくボクに連絡してきたんだと思います。だからボクもクロたちのお世話できるって嬉しくなっちゃって、二つ返事で引き受けたんですけど・・・知らなかったとはいえ、勝手に家の中に入ってごめんなさい・・・」
「・・・いやエルリックが謝る事ではない」
「でも本当に楽しかったから・・・だから・・・お兄さんとケンカしないでください・・・」

小さくため息をついてスカーはスプーンを置く。
せっかく良かれと思ってしてくれた事に、こんな思いをさせるのも不本意だった。
さっきまで嬉しそうに猫と戯れていた顔が曇ってしまい、残念にさえ思えた。

その4に続く