「サニーサイド」のあっちょんさんからいただいたお中元
「お帰りなさい」
我が家の猫たちを膝に肩に、そして足の上にのせそこに居るのが当たり前のように本を読んでいた。
「・・・・エルリック、お前は何を・・・」
あまりにも予想外で何かを言わなくてはと思いつつ言葉にならない。
パクパクと酸素不足の金魚のように口は開閉を繰り返し、眉間にはしわが寄ったままだ。
にもかかわらず、アルフォンスは何も気にするわけでもなくぱたりと本を閉じる。
「寝てるところごめんね?よっこいしょ」
などと猫たちをどけると、台所へと歩いて行った。
その後を何匹かの猫が追いかける。
「スカー先生、お風呂も沸かしてありますけど先にご飯にしますか?あ、こら!君たちはもう食べたでしょ?」
にゃがにゃがと足元にすり寄る猫たちをかわして、エプロンをかけた。
ネコ柄の見た事のないエプロンだったので、自宅から持ってきたのだろう。
ずいぶんと猫たちは馴れているようで、問題児猫のクロもさび柄猫のベルナルドも全く警戒していなかった。
「どうします?ビーフシチューを作ったので温めるだけですぐ食べられるようになってますけど」
「あ?・・・ああ、では風呂に・・・」
「わかりました。タオルはケースにしまってありますから。出たらすぐに食べられるよう準備しておきますね」
「・・・すまん」
トランクを寝室に運び、着替えを用意して風呂へと向かう。
確かにエコノミークラスの飛行機のシートで長時間座っていたから、正直ゆっくりと湯船につかりたいとは思っていた。
自分が人様よりも幾分図体が大きいのは自覚している。
だから両隣の乗客に迷惑かけないよう、縮こまって座っていたせいで身体のあちこちが痛かった。
ピンクがかった花の香りの湯に戸惑ったが、とりあえずゆっくりと浸かる。
ざばりと顔を洗ったところで、あらためて思った。
「何故、ヤツがここにいる?!」
鍵がかかっていただろうから、勝手に入れるはずはない。
いや、もしかしたら兄が今朝鍵をかけ忘れたのではないか?
ではそれをいいことに、不法侵入してアルフォンスは洗濯をし、猫達の面倒を見て夕飯と風呂の支度をしていたというのか?
何のために??
腹を空かせた猫たちにエサを与えておいてくれたのはありがたいとはいえ、勝手に人の家に上がるのは犯罪だ。
風呂から上がったら、しっかりと説教をしなくてはとスカーは手早く身体を洗い終えた。