「サニーサイド」のあっちょんさんからいただいたお中元

「お帰りなさい」

 

スカーは家路を急いでいた。
ガラガラと大きめのトランクを引きながら、3泊4日の研修から戻ってきたところだ。
自宅の猫は兄に頼んでいたが、心配だった。
前回お願いした時は、エサの袋の入ったボックスをうっかり閉め忘れて、帰宅後にばら撒かれたカリカリと粉々にされた袋を片付けるのに苦労したことがある。
有料のヘルパーに頼もうかそれともペットホテルに入れてしまおうと考えたが、一番老齢の猫が体調を崩していて環境の変化に耐えられないだろうと、知らない人間だけを自宅にいれるのも躊躇していた。
だからどうしても頼れるのは、兄しかいなかったのだった。

その兄も今朝の餌やりまでで、お腹を空かせている面々が待機しているかと思えば自然と足を運ぶピッチが上げる。
もう少し早い時間に帰宅予定だったのが、飛行機の遅延で遅くなったのも苛立たせていた。
コンビニに寄って夕食と明日の朝食を買いたかったが、スルーせざるを得ない。
今日の夕食は冷凍されている何かで済ませてしまおう、それもいつになるやらと険しい顔に立てしわが入るのを感じていた。
そんな姿に誰も声などかけないだろう。

バッグから焦る気持ちを抑えつつ鍵を取り出し、ガチャリと開錠する。
いつも待ちきれない猫たちが、玄関前で待機しているので逃げ出さないよう気をつけてドアを開けた。
しかし予想とは反して、誰も待ってはいなかった。
そのかわり部屋の明かりが灯っていて、誰かの気配がした。

「兄者が来ているのか?」

自宅の鍵は兄に渡しているだけで、他の鍵はない。
兄がいてもおかしくはないのだが・・・。
リビングへの扉を開けると、お腹のすくいい香りがした。

「あ、おかえりなさい!遅かったですね〜」

と、そこに居るはずのない人物がいた。
アルフォンス・エルリックだ。

 

その2に続く