アンジェリークデュエット DVD 下巻

さて、いよいよオスカー様の出番でございます。
中巻でアンジェに対して意識している自分を自覚したオスカー様だけど、果たして…

 

子どもはリンゴが欲しいのです。
甘いリンゴが欲しいのにそれがどうしても手に入らないなら
傷んだリンゴでもいいから欲しいのです。
甘い言葉で優しくして欲しいのにそれが手に入らないのなら
石をぶつけて怒られてもいいから振り向いて欲しいのです。
石が当たって落ちたリンゴはとても酸っぱいものなのに
子どもはリンゴが欲しいのです。

 

「お嬢ちゃん、金の髪の女王候補のお嬢ちゃん。」
 彼女が絶対いやがるとわかっていて、俺はわざとそう呼んでみた。
 俺と彼女は出会い方が悪かったのか、彼女が俺を避けているのはわかっていた。放っておけばいい。女王候補の彼女はそのうち必ず自分から育成を頼みに来るはずだから。彼女が困ってぺちゃんこになっている頃に何食わぬ顔で現れて、もっともらしく話を聞いて優しいことを言ったりちょっと叱ってやるだけで、簡単に彼女は俺のことを「いい人だ」と思うから。それまでなにも言うことはない。それが大人が子どもにやってやることだ。それまでまっていれば…
「アンジェリークですっ!!」
お嬢ちゃん攻撃が効いたのか、真っ赤な顔でくるりと振り返ると彼女はぷんぷんになって怒っていた。なぜか、顔が笑ってしまう。
「最近、会う機会がないんで名前を忘れかけてたぜ」
冗談半分、半分本気だ。これ以上会わなかったら名前を忘れちまうからな、というくらい俺は待っていたんだろうか。
「用があったら行きます。」
…可愛くないことを言う、その態度がすごく可愛い。可愛いと思ってしまう。怒っているのが可愛くて仕方がないから、こっちの方を向いてくれたのがうれしくてついついからかってしまう。これじゃただのガキだ。好きな子をいじめて喜んでいるガキと一緒じゃないか。
 彼女はくるりときびすを返してすたすたといってしまう。その後ろ姿にもういちど声をかける、石をぶつけてみる。
「俺の見ていないところで転ぶなよ。」
この小石は効いた。
「そんなにいつも転んでなんかいません!!」
その真っ赤なリンゴのような顔に笑いがこみあげてくる。止めようのない笑い声に彼女の怒った声が混じる。

「まったくみちゃいられないよ。こっちのほうが恥ずかしいったらありゃしない。」
極楽鳥がこの光景を見ていたらきっとこういったに違いない。ああ、まったく自分でもそう思う。自己嫌悪に陥りながらも、一方押しとどめようのない高揚感。怒った彼女の顔はまるで酸っぱいリンゴだ。その酸っぱさに胸がうずく。酸っぱくて甘い痛みを伴ううずきに驚く。
「じゃあ、会いに来てくれ。」
会いにきてくれるだろうか。会いに来てほしい。会いたい。彼女に投げかけた言葉を胸の中で繰り返す。高ぶる気持ちのなか振り子のように。

 

「子どもはりんごがほしいのです」…って、
これはお母さんに甘えたい子どもの心理なんだけどね。
はー、オスカー様まるで子どもの「好きな子いじめ」です。
とはいうものの、はじめてなんだろーなーと思っちゃう。
「プレイボーイの初恋」ってああ、でもこれじゃガキんちょです。
そんなオスカー様を不覚にも可愛いと思っちゃいましたよ。とほー。

まだまだ続くDVD下巻
とにかく見所満載ですわ〜