ASUKA9月号

今月のASUKAはまさかのオスカー様の全ページに渡ってのご登場。

まさにオスカー様祭りとしかいいようのないASUKAでしたの。

しかも、オスカー様のアンジェに対する発言や独白がなんとも意味深なんですもの!!

前回は「親密度120の恋」と何とも切なくやるせない星のささやきでしたけど

今回、なんと親密度が180くらいに上昇していたのよ!!

 

 

 女王試験が始まって何カ月が過ぎただろう。飛空都市から聖地へもどるとその不気味なまでの静けさが、かえって世界のほつれや歪みを感じさせる。なんという違和感。そして、崩壊がはじまる。陛下のお力が弱まれば辺境に近づくほどやっかいな連中が騒ぎ出す。聖なる力に相対する魔の力。それを抑えるのがこの終末の世代の守護聖の役割だ。時には少しばかりやっかいな任務もある。炎の守護聖という立場上、危険が伴う任務があるのも承知の上だ。
  左手が疼く。昨日受けた傷だ。止血はしたがまた傷口が開くかも知れないな。魔の力で受けた傷はここ最近治りが悪い。これも陛下のお力が弱まっている影響だろうか。

その夜、夢を見た。
  俺は荒れ果てた大地の上に立っていた。空には暗雲がたちこめ、星さえみえない。おそろしいほどの静寂。今の聖地はちょうどこんな感じだ。生きる者の生気がほとんど感じられない。崩壊した世界とはこんな感じなんだろうか。左腕から血が流れているのは…ああ、これは夢か…左腕の疼きがこんな夢を見せるんだ。

 
 その時、天空に小さな星がひとつ輝く。小さな弱々しい輝きはだんだんと明るさを増し、暗い空を照らす。その輝きのなかに人影が浮かぶ。白い翼を広げ、天空高くはばたく慈愛に満ちた姿が降臨する。女王陛下だ…未だその姿を拝見したことはないが、この身に届くサクリアはまちがいない。俺の剣と心を捧げる特別な女性だ。反射的に膝をつき顔を伏せ、騎士の礼をとる。鴇色のドレスの裾が目に入る。白い柔らかい指先が、俺の傷ついた左手を取ると右手の疼きがとまる。かつてとある辺境の惑星でメシアと呼ばれた男がおこした奇跡にもにて、その指先からあたたかなサクリアが伝わる。そのまま俺は目を細い指先からしなやかな腕、小さな肩に目を移す。肩に掛かる金色の髪…そして…

「お嬢ちゃん…?」

 女王の衣装に身を包み、白い翼をもつその姿は紛れもなくアンジェリーク。いまだ飛空都市で試験を受けているはずの小さな少女だった。

「いやだ、オスカー様。私いつまでも子どもじゃないですよ。」

 「おかえりなさいませ。オスカー様。」
 飛空都市に戻ったときに聞く王立研究員の挨拶に、すっかりここでの生活になじんでしまったことを改めて気づかされる。
「オスカー様。何か危険なことでも?」
 勘のいいパスハが俺の左手に気づいたようだ。今朝になって急激に回復してきたとはいえ、少し傷口がひらいたか。あれこれ気を使わせて逆に皆の不安感を煽るのはなるべく避けなくては…マントを少し垂らすと左腕を隠した。そういえば、昨日の夢は何だったんだろうな、あの子ども子どもしたお嬢ちゃんが女王か、と思っていると、目の前にきょとんとした顔で金の髪のお嬢ちゃんが立っていた。
「お嬢ちゃん!?」
 不意をつかれた気がした。
「パスハさんに退出のご挨拶に来たんです。ちょっと大陸に気になるところがあってちょっと遅くなってしまいました。」
「では、馬車を用意させよう。」
「いえ、いいんです。今日は歩いて帰るつもりですから。」
王立研究院から特別寮までは結構の距離がある。そのうえ、もう日暮れだ。
「よし、俺がエスコートしよう。」
「え、でも大丈夫ですよ。飛空都市に危険なところなんてありませんよ。」
「女性を一人で帰らせるなんて、俺にできると思うのか?」
 …っと、つい強い口調で言ってしまった。お嬢ちゃんは面食らった顔で
「女性…?って私のことですか?」
と聞いている。
「オスカー様に『女性』なんて言われたらそっちの方が危険だったりして♪」
いかん、軽口でかわされている。これじゃいつもの逆だ。どうも調子が狂う。昨日の夢のせいだ。しかし本当に調子が狂わされたのは
「ウソです。信用していますよ。オスカー様。」
とにっこり笑ってかえされたときだ。以前のような、一種警戒するような様子ではなく、「信用している。」という言葉は本心だろう。女王からの信頼こそ守護聖の本懐というものだろう。なんだかほっとしたようなうれしいような変な気分だ。とにかく外へ出よう。俺はお嬢ちゃんといっしょに王立研究院を出た。

「うわー、綺麗な空の色。私これを見ながら帰りたかったんです。不思議ですよね。この場所が惑星の上空に浮かんでいるなんて。私、飛空都市が大好きです。大陸のあるこの惑星も、新世界も。」
 はしゃいだ様子で俺の前を歩きながら話すお嬢ちゃんを見ていると、なんだか口元が緩んでくる。美しいものを美しいと感じ、惑星や都市、世界を愛するのは女王の大切な資質だ。だが、それは感受性の強い少女ならごく普通のことかもしれない。ふと、お嬢ちゃんが足を止める。
「オスカー様」
くるりと俺の方を振り向くと
「…主星では何が起こっているんですか?皆様聖地にお戻りになることが増えているし何か危ないことをなさっているんですか?」
そういって、俺のマントの下に隠した左手にちらりと目を向ける。パスハとの話を聞かれたのか…それとも気づいていたのか…その真剣な眼差し。ただのセンチメンタルな少女というだけでない女王候補としての顔を見せる。
「危ないことをしているわけじゃない。女王交代が近づくと宇宙のバランスが少し崩れるものらしい。宇宙が新女王の誕生を待ちわびているってところかな。」
そうとも、待ちわびているんだ。世界のバランスは大きく崩れはじめている。しかし、それを言ったところでかえってお嬢ちゃんを不安がらせる。
「…私は…みんなの望むような女王になれるんでしょうか。」
 女王…皆の望むような女王…守護聖と違い女王候補だけが自分の意志で女王の座を辞退できる。中途半端な気持ちや望まずに女王になることは宇宙にとって危険きわまりないからだ。自分の意志。それこそが女王として試される最後の資質。望まずに女王になるくらいならならない方がいい。俺としてもやる気のない女王に借す力などない。
「さあ、それはお嬢ちゃん次第だな。だがいずれ道を選ばなければならないときが来る。それは覚悟しておけよ。以前にも言ったが、女王とは俺の剣と…そして、心を捧げる特別な女性だからな。」
 口が滑った…と思った。俺としたことが何だか言ってはまずいことまで言ったような…まるで告白のような… やっぱり今日はどうかしている。


 幸い彼女は女王を選ぶかどうかの選択に気を取られていたようで俺の言葉にそれ以上深入りはしてこなかった。
 特別寮の前で別れ際、昨日の夢のことを思い出し
「じゃあな、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんの夢の中にちょっとでも登場することができたら嬉しいぜ。」
と、軽口をたたいたところ
「ムリですよ。オスカー様はこれから『大人のおつきあい』で忙しいでしょうから。でも飲み過ぎないでくださいね。」
と、あっさりかわされてしまった。そうだな、だが君だっていつまでも子どもじゃない。夢の中でもそう自分で言っていただろう。そう遠くないころに彼女は選択を迫られる。女王になるか、否か。その時彼女はどう答えるだろう。そして俺は…
 なんだか気がそがれた気がした。こんな日はオリヴィエとでも飲んだ方がいい。
 彼女の後ろ姿を見送って俺は踵を返した。

 

 

      

 

とまあ、こんな具合でオスカー様のアンジェへの親密度が急上昇だったのよ!

あのASUKAを見る限りオスカー様は

女王を目指す向上心あふれる女王候補であるアンジェが気になると見たわ!

これって「女王アンジェちゃんと騎士オスカー様」の伏線!?

なんだか自分の思惑通りコトが進みそうでかえって怖すぎるわ〜。