今夜はフルムーン。とある惑星では「中秋の名月」と呼んで「お月見」を刷る習慣があるそうね。と言うわけで、一人アンニュイにトランプ占いなどしているオリヴィエ様のお屋敷にやって来たのは、オスカー様、ジュリアス様、そして、あらあら陛下じゃありませんか。
「こんばんわ、オリヴィエ様。とっても綺麗なお月様なんですよ。ご一緒にお月見しませんか?」
後ろでは、本当は二人っきりでお月見デートがしたかったとありありとお顔に描かれているオスカー様が立っていらっしゃるわ〜〜〜。
「あら、トランプされていたんですか。お邪魔だったかしら。」
とんでもないと立ち上がるオリヴィエ様に
「そうだわ、オリヴィエ様、私とカードで勝負してくださらない?それで私が勝ったらご一緒にお月見しましょうよ。私、この間からオスカー様にカードを教えていただいてるんです。」
そなた陛下に賭博を教えておるのか、と言わんばかりのジュリアス様の視線に気づかぬそぶりで、オスカー様ったら
「おい、ポーカーだったら俺も乗るぜ。」
と、やる気満々。と言うわけで、この四人のメンツでカード遊びは始まったの。
☆
とはいうものの、ほとんど初心者の陛下を交えてではこれではまるで接待ポーカー。大勝ちするわけにもいかず、ゲームはちょっと停滞気味。
「せっかくだから、何か賭けない?」
オリヴィエ様が切り出したわ。すると、オスカー様ったら
「そう言うなら、まずお前が賭けろ。そうだ、俺が勝ったら『明日一日執務はすっぴん』と言うのはどうだ。当然香水も控えてもらう。」
ええええええ〜〜〜!!!オリヴィエ様のあのケバイ…もとい念入りなお化粧を考えるとおそらく眉はほとんどないだろうし、本来化粧映えする顔ってのっぺりした顔が多いのよ。すっぴんのオリヴィエ様って一体…どうやら、陛下も同じ考えのようで、すっかり動転されているようね。
「冗談でしょう。化粧をしないで執務なんて私にとっては、裸で執務をしろっていうのも同然よ。むしろ、化粧をしてるんだったら裸で執務をしたって全然構わないんだけど。」
「それはものすごく風紀を乱すからやめてもらいたいものだ。」
「んまーっ、なによ、その差別的な発言は。だったらオスカー、あんたが負けたら、1日素っ裸で執務をしてもらおうじゃないの。」
なんですってえぇぇぇぇぇ〜〜〜v
…はっ、つい絶叫のあとに「v」がついてしまったわ。私としたことがほほほほほほほほ。それにしても、陛下の方はますますもって胸中穏やかではなさそう…。カードどころかもう頭のなかはぐーるぐる。オスカー様が勝てばオリヴィエ様はのっぺらい点々眉のお顔で(と、思いこんでいる)
執務。オリヴィエ様が勝てばオスカー様は素っ裸で執務。
(ど…どうしよう、どっちも大変なことになっちゃう。オスカー様ったら明日は王立宇宙軍の謁見があるのよ〜〜〜!!常春の聖地と違って主星はもう秋なんだから、裸で謁見なんてしたら風邪ひいちゃうわ〜〜〜〜!!)
…つっこみどころが違う気がするんだけど…陛下の心配をよそに男どもはやる気満々。
(ああ〜〜〜ん。女王陛下、私にご加護を…!…って私が女王だったんだわーっ!!ど…どうしよう、どうしよう。)
「勝負!!」
カードが一斉に開かれたわ。
オスカー様が「7から11へのストレート。」
オリヴィエ様は「ハートのストレートフラッシュ!」
きゃあああぁ〜〜vすると、オスカー様の裸で謁見決定!?そこで陛下が
「あの〜〜〜〜、私スペードのロイヤルストレートフラッシュです〜〜〜〜」
しーん、と静まりかえった一同の中、スペードの1,10,J、Q、Kが並んだわ。
「これって一番強いんですよね。だったら私が勝ちってコトで、それじゃ、みんなでお月見ですねっ!ねっ!もちろん、私の勝ちですから皆さんの賭けはなしです。」
……みょ〜にはしゃいてみせる陛下の様子にオスカー様もオリヴィエ様もなんだかヘンだと顔を見合わせているのだけれど 、そこに
「…陛下…私はキングのフォーカードなのだが…なぜ、スペードのKが2枚あるのだろう…」
「陛下…」
じーと3人に見つめられて、陛下は焦りまくっているわ。
「きゃ〜〜〜〜〜ん。だって、オスカー様もオリヴィエ様もとんでもないことをおっしゃるんですもの。それで時の精霊にちょっとお願いして…ごめんなさーい!!!」
それにしても、すぐバレるいかさまを…素人のお嬢さんはこれだから…。それにしても、ジュリアス様ったら見逃して差し上げればいいのに。でも、それができないのがジュリアス様なのだけれど…
「いかん、いかん、いかーん!!!」
と、叫んだのはジュリアス様ではなくオスカー様。
「アンジェリーク!俺は悲しいぞ!!賭場でイカサマをするなんて…!ジュリアス様、妻の不始末は夫の俺の不始末。よーく話して、仕置き…指導しておきますので今宵はこれにて失礼します!!」
言うだけ言うと、オスカー様は陛下を抱え疾風のように立ち去っていってしまったわ。呆然とするお二人は
「いつ…あの者たちは入籍したのだろう…」
「何いってんの。聖地に召喚された私たちに籍なんかあるわけないじゃないの。…オスカーにしてやられたわ…」
☆
「ああ〜〜ん、オスカー様。もう許してくださーい!!」
「あまいな。賭場あらしは重罪なんだぜ。それじゃ、お仕置きがてら、可愛いウサギちゃんとお月見とするか。」
真っ赤なバニーガールの衣装に身を包んだ陛下をおろすとオスカー様は、それはもう上機嫌。
(こーゆーシチュエーションもまたいつもと違って面白いな。次は…そうだな、カードでおけらにして「借金のカタにがんじがらめにして言うことをきかせる」というパターンがいいかな…♪)
……オスカー様、それってなんだか安っぽいイメクラみたいです。オヤジくさいから程々になさいませ……
「うさぎ、うさぎ、何みて跳ねる。十五夜お月様みて跳ねる♪」
鼻歌交じりに去っていったオスカー様のお月見がどうだったかは、月だけが知っているのですわ。
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