「うつぶせに寝ろ。」

言われるままにのろのろと身体を動かす。
腰を持ち上げられて四つん這いにされると、有らぬところに薬を塗られて声を上げた。

「初めてなら尚更、解かさぬと辛いのはお前の方だぞ。」

逃げ出したかった。
でも逃げ出せなかった。
グニュグニュとお腹の中を這いまわる太い指の感覚に足が震える。
腰をスカーの鍛え上げられた腕が支えて、自然と逃げようとするが引き戻されてしまう。
痛くはないが、涙が溢れてきた。
水音が室内に響き、自分から発せられているとは思いたくなかった。
耳をふさぎ、顔を枕にうずめる。

「やめてもらいたいなら言えばいい。無理強いは面白くないからな。」
「…大丈夫だから…続けろよ。」
「ふん、強情なガキだ。」

生意気な態度にスカーは憤慨した。
何処まで強がりを言うのだと。
ならば本当に犯してしまえと、心がざわついた。
三本の指が入る様になり、もういいだろうと自分の手で自身に高度を持たせあてがう。

「いくぞ。」

ゆっくりと腰を進めていく。
だが充分に解いたとはいえ、小さな身体で咥えこめる大きさではない。
しかも初めての経験で力をうまく抜く事が出来ずに、メリメリと身体が軋むようだ。

「あっ…あああっ…はっ…あァ。」

うめき声の様な苦しげな声しか出ない。
先ほどの指とは違い、そのあまりの質量に涙があふれる。
半分ほどを挿入したところで、締め付けが増す。
もう進んでも引いても辛い状況になってしまっていた。

「力を抜け。」
「…そ、そんな事、…言われても…ううっ、んんっ…。」

今まで体験したことのない感触に、アルフォンスはどうしたらいいのか解らずにパニックになる。
そう焦れば焦るほど、締め付けてしまい苦しさが増すばかりだ。

「はあっあァああっ…。」

背中から見ても全身の白い肌が朱に染まり、汗が噴き出ている。
辛いのだ。
苦しいのだ。
そんな苦しみを与えようとはスカーは思っていなかった。
ただ、意地悪をしてやりたかっただけ。
心を試してみたかっただけだった。

「苦しいだろう、いいから口で息をすえ。」
「…大丈夫だから…、ボクに構わず…すればいい、だろ…。」

アルフォンスの心が自分から離れている。
そう思うと、ちりちりと心臓が痛んだ。
こんな暴力は望んでいなかったのに…。
今更ながらスカーは悔いた。
何故ならいつの間にかこの小さな生き物に、心を寄せてしまっていたのだ。
その想いが自分でなく、兄に対して向けられていたから面白くなかった。
お茶を飲み、楽しげに笑い、毎晩共に話していたアルフォンス。
この小さな生きモノの心は自分のモノでなく兄のモノだった。
兄の為に生きて、兄の為に凌辱にも耐え、そして自らを犠牲にするという。
スカーはそれが面白くなかった。
自分の中に巣くう黒い感情。
そうそれは、『嫉妬』だ。

「最低だな…。」

そう呟いて、苦しげに息をするアルフォンスの背中を優しく抱いた。
すっぽりと収まってしまう、小さな身体で自分に立ち向かって来たのかと今更ながら気づく。
そう思うと、愛しささえわいてくる。

「……アルフォンス、力を抜け。ゆっくりでいいから…。」

その時、アルフォンスの身体のこわばりが緩む。
自然と力が抜けて、今までが嘘のように固く閉じていた扉が開いた。
そのあまりにもの変貌に、スカーは驚いた。

「どうした、アルフォンス?」
「…初めて、ボクの事…名前で呼んでくれたね…。」

涙で濡れた顔にうっすらと笑みが現れる。
こんな状況なのに、そんな小さな事で喜ぶのか。
スカーは思わず力を込めてアルフォンスを抱きしめた。
それは同時に、深く杭を打ち込むことになる。

 

 

「ああっ…あ…ん、ふっ…あァああっ…。」

愛おしいと思った。
自分自身を深く刻み込んでやりたい気持ちになる。
それはアルフォンスにとって苦しさであったとしても、交わりたいと願った。

「…苦しいか…すまない…。」

でももう、抜いてやる事も出来ない。
意地悪でなく、この小さきものと繋がりたくなった。

「…大丈夫…、そんなに…辛くない、から…。」

嘘だ。
でも、その言葉を信じるしかない。
抱える様に胸に納め首筋に唇を落とした。

「…そうか…動くぞ。」
「…ふえっ、はっ…ああっああっ…っつ。」

アルフォンスの小さな手が、きつくシーツを掴む。
少しでも好くなればと、すっかり萎縮してしまった前にスカーは手を回しやんわりと指を絡める。
その優しい刺激を拾って、形を変えた。
それに合わせてアルフォンスの息づかいに、甘い吐息が混ざる。

「…んん、はっ…スカーさん…、待って…待って、下さいっ。」

はあはあと息を継ぎながら、アルフォンスが訴える。
今までスカーの動向を止める様な事を言わなかったアルフォンスが、静止の声をかけた。

「どうした、辛いか?」
「…ボク…へ、変に、なりそう…。…どうしよう…。」

その言葉にスカーは口元を緩める。
少なからず、自分からの行為に快楽を拾い上げてくれたようで胸のつかえが楽になった。

「そういうモノだ、アルフォンス。その感覚に身を任せればいい。」
「…でも…あっ…うっ…こ、怖いっ。」

訴えを無視して、手淫と動きを早める。
怖くない様に、耳元で名前を囁いてやる。
見失う様な昂揚感に、アルフォンスは涙を流した。

「…あっああっ…はっ…ああっ。」

ひときわ大きく鳴き背を仰け反らせると、ぱたぱたとスカーの手を汚した。
そして続く様に、低く呻くとスカーもアルフォンスの中で果てる。
ぐったりと横たわり、小さく身体を震わせアルフォンスは力尽きた。