細い指で震えながらアルフォンスはシャツのボタンを一つ一つ、ゆっくりとはずした。
あまりにも震えるので上手く外せない。
それをスカーは黙ってみていた。
すべて外し終えると、上半身裸になってスカーのベッドに横たわる。
きつく目をつぶり、握った両手を強張らせていた。

「下も脱げ。」
「わ、わかってるよ。」

羞恥で真っ赤になりながら、下も脱いだ。
ただし、下着だけは取り除けなかった。

ただのからかいだった。
どこで逃げ出すのか、スカーは内心面白がっていた。
そして逃げ出したアルフォンスに、こう言ってやろうと思っていた。

「所詮お前もその程度の兄弟関係なのだ。よくその口で偉そうに言えたもんだな。」

と、嘲笑ってやろうとしていた。

 

スカーが上着を脱ぎ捨ててするりとベッドに入り込むと、跳ね上がる様にアルフォンスはビクりとした。
小刻みに震えているのが解る。
これからされるであろう何かに怯えているのだ。

「怖いのか?だったら逃げればいいだろう。」
「…逃げない。…ボクは逃げないよ。」

あごに手を当てて上に上げる。
喉首をさらさせて、そこに唇を落とすと恐怖から小さく「ひっ。」と声が出る。
本気を出せば、この細い首など一噛みで食いちぎれる。
ワザと舌を這わせて、味見をしているかのように装う。

『ほら、逃げてみろ。』

そう思うスカーの思惑とは裏腹に、アルフォンスは震えながらもされるがままだった。
眼にはうっすらと涙まで浮かべているのに、それでも逃げようとはしない。
その態度はスカーから本能的な加虐心を芽生えさせる。
獲物を掴まえておいて、遊んでから捕食するというモノだ。
ごつごつとした手で腰を撫で、そして小さく縮こまってしまっている下着の中の若い中心を柔らかく握った。

「うわっ…。」

思わずアルフォンスの声が出る。
今まで他の者に触られた事などないだろう。
もしかしたら、自身でもした事が無いかもしれない。

「初めてか?」

それには声を出さずに、アルフォンスは首を小さく縦に振った。
馬鹿な奴だと思った。
これから凌辱されるのが初体験になるというのに、それでも兄を守ろうというのか。
たかが手紙1枚渡すという口約束を信じて…。


 

「ガキはやはりガキだな。何をされるか本当は解っていないのだろう。」
「…わ、わかってるよ…。」
「どうかな。」

下着をはぎ取り、一糸まとわぬ白い裸体をさらけ出させた。
それでも逃げないので、恐怖で萎縮した中心のそれをスカーは口にした。
馴れない感覚に初めはついていけずに変化がなかったが、それでも徐々に形を変え始めた。
恐ろしさに小刻みに震えていたが、それが態度を変える。
見上げればアルフォンスはきつく目をつぶり、恥ずかしさに手で顔を覆っていた。
自分の体内の変化に気が付き、どうしようもなくなっていた。
肌は朱色を帯びて、必死に膝を合わせようとする。
それをさせまいと、スカーは強い力で阻止した。
慣れた手つきで好い場所を撫でられて、どんどんと追い上げられ張り詰めていく。
怖さよりも違う感情が支配し始め、思わず腰が上がる。

「…ふうっ…んっ…。」

不意に出た声に驚いたのはアルフォンスの方。
自分の出した声とは思えなかったから。

「…ヤダ…。」
「そうか、なら止めてやろう。」
「ち、違う。止めなくていい…から。」

スカーの気を悪くさせれば、手紙を届けてくれないとアルフォンスは焦った。
嫌だと思ったのは、自分の声。
こんな声をスカーに聞かれるのが嫌だった。
無理やりこんな事をされているのに、出てきたのは色付いた自分の声。
恥ずかしさで消え入りたくなる。
必死に両手で口元をふさぎ抑え込む。
端からこぼれる吐息は抑えきれず、逆にスカーを煽るだけ。
そしてアルフォンスは…果てた。
肩ではあはあと息をしながら、睨みつけるようにスカーを見る。

「…もう…満足でしょ。これで、届けてくれる?」
「冗談。これからに決まっているだろう。そういえば、緑色の薬液を持っていたな。」

乱雑にアルフォンスのリュックを漁り、中から先日羽の傷に使った薬を出す。
それを何に使うのかアルフォンスは解らず、スカーの動きを眺めていた。