狭い空間に閉じ込められて、ゆっくりとゴンドラは登っていった。
向かい合って乗っているが、微妙に膝が触れ合ってしまう。
これはどうしようもなかった。
案内係の人間が、どういう関係なのかと不思議そうに二人を眺めていたのが面白かった。

「天気が良くてよかったですね」
「ああ、そうだな。それより早くヒントを出せ」
「ええ〜、解りました。じゃあ、ちょっと失礼します」

 

 

ぐらりとゴンドラが揺れてアルフォンスが中腰で立ち、スカーの頭からネコ耳のカチューシャを外した。
いままでつけている事をすっかり忘れていたので、1人で恥ずかしくなる。
アルフォンスはそのカチューシャを自分のと付け替えて、


「にゃあ」

と鳴いた。

「……そ、それがどうした?」
「ヒントですよ。思い出しませんか?」
「いや…まったく…」
「でもスカー先生、ネコ好きでしょ?」
「む…だからそれが一体」

訳が分からなかった。
呆けた顔をしていたので、アルフォンスもヒントにならなかったかと苦笑いする。

「じゃあ、初めてあった日にちですけど…今年の3月3日です。雨の降る、寒い朝でした」
「3月3日?…その日は確か…」
「ええ、高校の受験日ですよ」
「……お、…そ、そうか、お前はあの時の!」
「ええ、思い出してくれました?」
「今、思い出した。すまぬ、今まで忘れていた」
「いいんです。で、猫はどうしました?」
「ああ、あれは…」

そう、あの日の猫はスカーの家に居る。